ジョゼと虎と魚たち 感想

田舎なので小さな映画は大体一ヶ月ぐらいしてから落ちてくる。そんなわけでやっと今日公開。観てきました。
どうやら急所に入ったらしい。
全くもう、泣けて泣けて仕方なかった。いや、妻夫木視点で眺めてるうちはまだいいんだ。それが何となくジョゼにシフトした瞬間に涙腺決壊。こういうある種の諦念に包まれたような青春映画に俺は異常に弱い。
m@stervisionの見事すぎるレビューを先に読んでしまっていたのは小さな失敗だった。これから見ようと思ってる人は、何があっても読みに行かないように気をつけるべきだ。ひとつだけ書いておくと、「ジョゼと虎と魚たち」は、ある有名な童話の変奏である。それに気づかせるタイミングも周到に工夫されていて、そこで観客は彼女の深い深い深い深い海の底の闇のような諦念に触れることになる。気づかなくても触れることになる。そして涙腺決壊ですよ。彼女は最初から分かっていたのだ。見終わった後に反芻してみると、彼女が最初に握っていた包丁すら何だか切なくなってくる。くどいようだけど、彼女は最初から分かっていたのだ。あんな目で見たのは、何も坂が怖かったからだけじゃない。のだ。きっと。
「ジョゼとか言ってる時点でもう駄目」と言って回避してる人も多いと思う。俺も無職で暇じゃなかったら間違いなく観てないタイプの映画だが、いや、これは観たほうがいい。青春とか恋愛とかをほんの少しでも通過したことのある人ならば、何かしら心に響くところがあるはずだ。俺は響きすぎて大変に疲れた。良くある突っ込み所だけで出来ている日本映画とは一線を画する出来なので、洋画中心の人にも強く薦めておきます。
弱点を衝かれすぎたのであんまり書くことがない。妻夫木聡は生まれた時からモテるタイプの男を100%体現する名演って言うか多分地だ。素晴らしかった。こいつの演技に本気で泣かされるとは夢にも思ってなかった。池脇千鶴に至っては完全にジョゼでしかなく、上手い下手で論じられそうな部分自体が見当たらない。彼女なしにこの映画が成立することは絶対に無かったろう。何度も書くが素晴らしかった。
それと最後に補足。果てしなく純度の高い恋愛映画なので、当然のようにセックスを扱う部分が出てくる。落ち着いて映画に浸りたいなら、同行者の選別には気を遣った方が良いかも知れない。子連れとかは多分やめたほうがいい。余計なお世話かも知れないが、野郎二人みたいな組み合わせもリミッターがかかる可能性があるのでお薦めしない。よっぽど気を許している人と一緒か、あるいは一人でどうぞ。
「イン・アメリカ」に続いて爆発もないしヘリも飛ばない映画に根こそぎ持ってかれたので非常に悔しい。