THE TRIPLETS OF BELLEVILLE(VIDEO)

日本だとまだ公開されてないんだけど、幸運に恵まれて観ることが出来た。ラッキーでした。
今年度のアカデミー賞の長編アニメ部門にノミネートされている、フランス製のアニメ映画。字幕がまだついていないと言うことで、どうせワケ分かんないだろうなーと思っていたら、何とこの映画には全編に渡ってセリフが無いのだった。デフォルトで全言語ユーザー対応済みなのだ。驚いた。
この映画は日本と米国のアニメに対する見事な挑戦状だ。この鮮やかな(だけど露骨な)喧嘩の売り方には、誰もが「やっぱりフランス人ってこうなのか!」と苦笑するに違いない。かなりトンでもないことをやらかしているので、アニメファンの皆様はくれぐれもお楽しみに。拍手の一つでもあげたくなるはずだ。比喩じゃなくてかなり具体的なやり方で喧嘩売ってますよ。
映画は古典的なカートゥーンの絵柄で始まる。次いで伝統的なヨーロッパアニメっぽい絵本調に移行し、あーこういう絵なのねと油断したところで今度は先端的なジャパン・アニメっぽい感じが混ざってくる。まるで「俺ら黙ってたけど全部出来るんだよね、しかもお前らより巧く」と言ってるが如しである。フランス人め!動画のレベルも異常に高い。一体どこにこんな技術を隠し持ってたのかと問いつめたくなるような素晴らしい出来だ。基本的には2Dのセルアニメのタッチだが、至るところに3DCGが混入し、ウットリするような美しい動きも見せてくれる。しかも入れどころが異常に巧い。あまりに見た目の調和が取れているので、ボーっと観てたらCGかどうかなんて意識することは殆どないだろう。あっけに取られるようなカメラワークも何度か見せてくれる。不安になって何となく「スチームボーイ」の予告を見返してみたが・・・何だか負けてないか?CGも、動画の質も!
褒めてばっかだけど更に褒めよう。キャラクターの造形も面白い。拒食症の森本晃司と言うか、ディズニータッチの小池健と言うか、とにかく日本人じゃ絶対やらないような極端なデフォルメぶりが愉快だ。「そう言えば人間ってこんな形してるよな〜」と言う戯画としての愉しみがある。背景となる建築群も同様で、全てが縦方向に20倍と言う物凄いデフォルメが施されていて何だか凄い。確かに壮観だけど意味あんのかそれ。と言う突っ込みにも答えを用意してるのがフランス人。脱様式的とも言える解答を示してくれます。お前ら面白すぎるわ。
ストーリーについてはここでは触れない。俺も何の話だか分かんないまま観て大いにワクワクしたから。セリフが無いが故の話の掴めなさが凄く良い方向に働いている気がする。
そんなわけで褒めまくったが、これは本当に良く出来たアニメ映画です。派手じゃないけど凄みがある。野心が形として結実している。面白いかと聞かれれば普通ですと答えるが、観るべきかと聞かれれば観るべきだと答える。日本のアニメジャパニメーションとかワケの分かんないこと言って自画自賛してるだけじゃ、そのうち足もと掬われかねないぞ。
貴重なものを観られたという喜びも加味して、長編アニメ部門はこれが鉄板かも。