伊勢音頭恋寝刃(いせおんどこいのねたば)

歌舞伎座に歌舞伎を見に行った。ちなみに俺は歌舞伎を見るのは初めてで、歌舞伎座に入るのも初めてである。外から見て常々「立派な建物だがやー」と思っていたので、なかなか心躍る体験であった。
合いの手を入れる観客の威勢がよく、定期的に「かがや!」「かがや!」とシャウトするのが小気味よかったが、あまりに誰も出てきも去りもしないタイミングで何度も何度も叫ぶので、多少不安な気持ちになることもあった。あれには何か法則があるのか。
さてストーリーであるが、福岡貢と言うお侍さんが、青江下坂と言う名刀を(どんな顛末なのか知らないけれど)やっとの思いで取り返したそうで、それを今田万次郎という人に渡すため、どういうわけか伊勢の遊郭で暇を潰していたら、そこの仲居の万野と言うのが物凄い意地悪で、知らないうちに刀はすり替えてしまうし(と思わせといて実は喜助と言う男が更に中身をすり替えていた)、身に覚えのない悪口は浴びせてくるしで、貢は面目丸つぶれ状態となり、好きだったお紺さんにも嫌われちゃって、長居も出来ずに帰路につくが、途中で「鞘が違う!刀をすり替えられた!」と勘づいて、仲居の万野に「返せ」と詰め寄る。しかし返してくれないので遂に発狂。殺戮が始まる。さっきまでコメディっぽかったのにいきなり殺人鬼である。
目に入る物体を一通り皆殺しにした後、喜助が出てきて「誤解してるかも知れないけれど、実はそれが本物でやんす」とか言い始め、よーく見てみるとそれは紛れもない青江下坂、そのものではないか!最後に「さすが名刀!見よこの切れ味!」みたいな感じで気前良くもう一人斬り殺し、めでたしめでたし。拍手拍手。もの凄いストーリーだ。
ちゃんとしたストーリーはこちらを参照してください。

今日の感想であるが、仲居の万野を演じた人(中村福助)が凄かった。単なる儲け役なのか、それとも役者が凄いのか、その両方なのかは俺には判断できかねるが、素人目には明らかに際立っていた。
それと全般に、歌舞伎役者の身のこなしはやっぱり圧倒的でござりますね。動作は水の中を動くように流麗であり、それでいて全くブレを想像させない的確さを備えている。動かないときは微動だにしないのが凄い。お芝居をやっている人は一度は観た方がよいと思います。
また是非見に行きたい。