ユビキタス幻想

お風呂に入っている時などにたまーに思うのだが、人間の指の数は10本である。10本前後の人も稀にいるとは思うが、そうした例外を無視すればおおむね10本であり、よくよく考えてみると結構多い。
たとえば机の上に鉛筆が10本ぐらい散乱していたら結構鬱陶しいと思うのだが、そう言うモノが腕の先端でウジャウジャしているわけである。なかなかに感動的だ。
マジックナンバーという概念がある。人間が数えることなく一度に認識できる数とか、瞬間的に記憶できる数のことを言うのであるが、平均すると大体7前後らしい。指の数はそれを軽く超えている。たとえばあなたが自分の目の前で急に手のひらを開いたとしよう。唐突に沢山の指が展開されるわけだが、あなたがその数を瞬間的に認識できようとできなかろうと、それは確実に10本なのである。10本!何て多いんだ!ある種イーガン的とも言えそうな数学的感動がそこに横たわっていたりはしないだろうか。しないか。
で、恐ろしいことに人間には足の指もあるのだった。合計で20本だ。20本って!人間って思ったより指だらけだぞ!
などとキチガイじみたことを湯船につかりながら寝ぼけた頭で考えていると、20本かー、多いよなー、足と合わせると合計40本かー、そりゃ多いわー、などと本格的にキチガイじみた勘違いをウッカリしでかすことがあり、思い出し笑いのように一人で吹き出すのだった。
キチガイそのものという気もしますね。
心配されそうなので真面目っぽい文章を追記しておきますが、人間として普通の暮らしをしていると「指は5本」と言う捉え方でいる方が認識としては自然なわけです。そう言うふうな概念的スキーマが、日常生活の中で既に鍛えられている。そこでいきなり「20本」と言われると何だかたじろいでしまったり変な感じに陥るのは・・・一種のゲシュタルト崩壊みたいなものなのかも知れない。分かんないですけど。何かしら呼び名はあるはずだ。結局分からないのか。じっと手を見る。
あなたも指の数が気になる生活、始めてみませんか。