花とアリス(DVD)を見た

エントロピーの増大についての映画である。あるいは既に退場した者が、まだ其処に留まる者たちに花束を贈り続けると言う内容の映画である。留まる者たちは全能なだけで無知であり、自分たちが一体何者なのか、どこにいるのかを知ることはできない。全てを知る人物は平泉成ただ一人なのだが、その平泉成ですら、全てを知る過程で沢山のことを忘れてしまった。鈴木杏蒼井優も、やがて同じ道を辿るだろう。
彼女たちは巨大な散逸構造の存在にうっすらと気づきながら、何かを忘れないように、何かを思い出すために、淡くフレアがかった映像の中を、と言うかミニスカートとチュチュに彩られた岩井俊二の趣味が全開した映像の中を、彼女らなりの必死さで右往左往する。なかなかに美しい映画であった。
この世界では少女以外の女性は全員ひどい描かれ方をしており、広末涼子でさえ退場した者として鈍重な靴を履かされている。