21グラム(DVD)を見た

「バベル」の日本公開が待たれるアレハンドロ・ゴンザレス・イニャリトゥ監督の「21グラム」を見た。ショーン・ペンナオミ・ワッツベニシオ・デル・トロと言う演技派揃いの配役で、これで詰まらなかったらちょっと可哀想な感じだ。感想であるが、流石に見応えはあった。

時間軸が頻繁に前後する複雑な構成である。が、複雑なものが収束する際に立ち上がってくる驚きみたいなものはない。そもそもそうした効果を狙って時間をシャッフルさせたわけではなさそうである。じゃあどうして時間を前後させたのか?正直言うと、あまりよく分からない。もちろん手法としては全然失敗しておらず、ある出来事によって世界が一変してしまう感じとか、何だかもう取り返しがつかないのだな、と言うような感覚に、一定の重量、と言うか性格を与えることには成功している、のだが、しかしこれを正攻法で見せていたら、一体どうだったであろう。より確固とした、重量のある映画に仕上がったような気がしてならない。手法に必然性がない、とまでは言わないが、単に手癖で時間をいじりたくなっただけじゃねえの、とか、珍しい映画にしたかっただけなんじゃねえの、と言う疑問を一掃する程のものではなかった。
とは言え重ければ重いほど良い映画、というわけでもないし、このああ無情すぎる物語の語り口としては、このぐらいの重量感が実は適切だったのかも知れない。狙ったものなのかどうかは定かではないが、つらつらと、死人が見た夢みたいな雰囲気は良く出ている。
DVDで、しかもパソコンの画面で見たのだが、フィルム撮りの粒子が美しかった。
最後に若干のネタバレになるが、ショーン・ペンの身体から21グラムが失われたのはいつだったのか?自分がショーン・ペンだったとしたら、「必要でしたら」と医師に<ネタバレ--エロ本--ココマデ>を勧められた時であったろうと思う。あれはちょっと殺人的な仕打ちである。