解夏 感想

見てきた。導入部はホラー、中盤以降は観光映画としてそのまま幕を閉じる。
・・・ただ、長崎の景色と美男美女(大沢たかお石田ゆり子)のカップルを観光する映画としての価値は低くない。石田ゆり子執拗な薄着は特に重要な見所だ。キャスティングは良かったですね。古田新太柄本明田辺誠一の三人のことだけど、順番に出てきて観客が主人公の病気の重たさに憂鬱になる一歩手前で映画を救ってくれていた。一方女性陣は皆さんリアリティのないキャラで映画の程度を下げていた。特に石田ゆり子のキャラクターは謎だらけで、行動や言動を冷静に検証してみると御都合主義とは言え相当な変人であると言わざるを得ない。その行動を的確に予測する大沢たかおかなりエスパーだ。見た目が麗しいので別に良いが、演技も含めてそこら辺は結構ズサンなものがあった。
原作はさだまさしの短編集「解夏*1の表題作「解夏」。映画全体に漂うスカスカ感はそれに因る部分が大きいのだろう。さだの原作がスカ、と言う話ではなく(読んでいないので分からない)、短編を長編映画の脚本に仕立て直す際に何かを間違っている。2時間の映画としては内容が散漫すぎるし、そのわりに無駄なところに時間を使いすぎだ。これは演出のテンポ云々の話ではなく、明らかに脚本上の不備だ。たとえば母親が苦悩するエピソードは全て切り落としても良かった。いっそ父親だけでなく母親も不在とした方が主人公の孤独をもっと明確に描けたかも知れない。観客が見たいのは主人公が「解夏」に至るまでの心境なのであって、子を思う母の気持ちとか、嫁姑の友情とかをわざわざ描写する意味は果たしてあったのかどうか。そこら辺は思い切って脚色する勇気が欲しかった。でもコアな客層かも知れない主婦にとっては必要なエピソードだったのかも知れないね。田辺誠一のパートは悪くなかった。
そんなわけで大して面白くもないし、率直に言ってしまえば「解夏」という言葉が喚起するイメージの豊かさに全てを頼り切って何もしていない映画だけど、何となく自分の人生を見つめ直す契機にはなるかも知れません。僕は長崎ちゃんぽんが食べたくなりました。
以下箇条書きでネタバレ

・「半年前、モンゴル」のテロップは冗談かと思った。
ベーチェット病に冒された大沢たかおかくれんぼを強要する石田ゆり子鬼だ。
・「それがあなたの解夏で御座いましょう(うろ覚え)」「・・・ゲゲ。」のやりとりを冗談として受け取ってしまったら大惨事だ。
・ラストシーン、真っ白に染まった視界の中に石田ゆり子の顔が思いっきり出現する。監督は頭がおかしいと思いました。
色々ズンボロに書きましたけど、近場の映画館のレイトショー(1000円)で眺める映画としては別に腹が立つような内容でもないです。映画自体が面白いかどうかは保証できないけど、余韻みたいなものは大きい。俺は普通に長崎とか行ってみたいなあと思ったし、俺が最後に見たいものって何だろうとちょっと考え込んだりもしたよ。普通に楽しんだわりにケチをつけすぎたので、こうして一応フォローを入れておく。無職で暇だと映画に寛容になります。良いことだ。