第6回ユーリ・ノルシュテイン大賞

ユーリ・ノルシュテイン大賞とは、毎年ラピュタ阿佐ヶ谷で開催されている短編アニメのコンペティションである。世界的アニメ作家であるユーリ・ノルシュテインが来日し、ノル本人が審査することで知られている。どんな賞なのか詳細はこちら(→)を参照して下さい。おととい審査上映会があって、昨日が選外作の上映集だった。続けて30本ぐらいのアニメを見ましたよ。
ノル大賞は山村浩二加藤久仁生たむらしげる等が出品しても大賞が出ない、と言うか6回開催されて一度も大賞が出ていないと言う頭のおかしいコンペティションだが、審査委員長であるノルシュテイン本人の頭がおかしいんだからそれも仕方がない。ノルシュテインフレデリック・バック級の作家の作品に対してすら平然と難癖をつける男だ。命を削って作りました級のものが出てこない限り、大賞は絶対に出ないだろう。そんなわけで今年も出ませんでした。
ノルシュテインは昨年の段階で日本の非商業的短編アニメのレベルの低さに絶望しており、前回のノル大賞は始まった途端に説教大会になってしまって大変だった(NHKのドキュメンタリーで見た人もいると思う)。「外套」と言う一本のアニメーションを20年にわたって作り続けている(いまだに完成の見込みがない)偏執狂の老人に、自分のレベルで他人を語られても正直どうしようもないと思うが、今年の出品作をまとめて眺めていたら、ノルの絶望の理由も多少は理解できたような気持ちになった。ノルが繰り返し吐き続ける「コンピューターの弊害」とか「ディテールの不足」とか「あまりに抽象的」とか、昨年は老人の説教としか思えなかった言葉が、何だか真っ当な意見に思えてきたのだった。
ノルシュテインのお気に入りである「日本の若者は静かで抽象的な世界に生きている。一度冷たい水に突き落とした方がいい」みたいな精神論は全く無視していいと思うが(むしろ若者としては反発すべき部分だ)、技術面、アイデア面についての苦言は(観客として映像をみた場合)完全に正鵠を射ていると思う。
続きはまた後で書きますね。
で、続きを書くつもりで随分時間がたってしまったわけですが、最近の人って既にある創作物からイマジネーションを得てアニメーションを作ろうとするから、動きに具体性がないのです。アニメを見てアニメを作ろうとしている。既にデフォルメされたものをデフォルメしても、それはそれで面白いものが出来る可能性もあるけれど、自覚的にやらない限りは大体は失敗に終わるだろう。アニメーションの面白さは、「動かないものを動かす」「立体を平面に置き換える」と言う快感にある。テーマとか問題意識を作品に反映させる前に、もうちょっとアニメーション自体の快感に従って作品を作って欲しいと思う次第であります。