シーズン

小さい頃は秋が大好きで、夏はあんまり好きではなかったのだが、やたらと残暑が長く続き、9月の下旬ぐらいまでずっと暑くて、その後ボンヤリと秋に似たものが到来し、いきなり冬になる、と言う年が、人生のある時期に数回連続したおかげで(記憶の中でそうなっているだけで、実際は知らない)、「もっと季節感のある季節を好きになったほうが良いのではないか?」と言う思いが強くなり、試しにそれまで大して好きではなかった夏を「好きだ!」と思いこんで1年を過ごしてみたところ、あっさりと夏大好き人間に変貌し、今では夏が終わるとガッカリするようにさえなった。今年も夏が終わってしまった。結局一度もクーラーは使わなかった。
しかしながら潜在的には秋ファンなので、9月の朝にちょっと肌寒いと感じた時や、吸い込む息に冷気を感じた時や、空がやたらと高くて青い時や、公園で肉まんが食べたくなった時などには、小さい頃の運動会の空気とか、学校のバザーなんかで見上げた景色やらにおいを思い出して、季節感のない地下鉄とコンクリートジャンゴーを詰まらなく行き来しているうちに何だか平坦になってしまった一年の中にも、そう言えば起伏とか新鮮さみたいなものがあったはずではないか、日々、と言うような気持ちが突然に湧き上がり、それじゃ今夜は虫の声でも聴きながら優雅に寝ようじゃないか、と思って若干窓を開けて寝たところ寒かったらしく風邪をひいた。
全ての季節を楽しく過ごせたら人生ちょっと素敵であろうと思う。俳句でもやるか。もはやジジイだ。