カーネーション「ROCK LOVE」@吉祥寺バウスシアター初日

見てきた。直枝さんは開演待ちでごった返すチケット売り場を正面から普通に突破していった。素敵だ。
舞台挨拶に上がった直枝さんは、黒のスーツに帽子姿。若干やせた感じでした。髪が伸びてパーマくりくりで、何というかロココ調であった。
バウスシアターの爆音レイトは初めてだったんだけど(爆音ビールも初めて飲んだ)、友達から「バウスの爆音レイトは大して爆音じゃないよ」と聞いていたので、必要以上に油断した状態で上映に臨むこととなった。結果、最初の一音で思いっきりビクッとしてしまい、恥ずかしかったです。音量はちょうど音楽のライブ会場みたいな感じで、楽曲シーンは非常に楽しいんだけど、普通の喋りまで大音量なので少し疲れた。特に低音が強くって、大田さんの声は部分的に聞き取れなかった。残念。
映画はナレーションなし、インタビュアーの登場/見切れなしの、おおむね独白形式のドキュメンタリー。全般に内田栄一っぽいと言うか、ホームビデオっぽいと言うか、良くも悪くも素人的なプリミティブを感じさせるような映像で、何じゃこりゃと思う人は思うかも知れない。この手の映像を撮る人は、たいてい演奏シーンを撮るのが殺人的に下手くそなので、開巻と同時に大いに警戒したが、その辺りは妙に手慣れていて驚きだった。カメラは不安定にずーっと動き回ってるんだけど、ほとんどの時間でフィックスの絵がオーバーラップしてるので意外に見づらくない。完全に手持ちだけの時間は巧妙に調節されていて、天然かも知れないけどこれは一種の技術と言って良いでしょう。楽しかったです。
一箇所だけ台詞があったんだけど、一体あれは何だったのか。謎だ。
カーネーションの男達は皆かっこよかったし、ハリケーン本根さんの誠実さにも痺れた。自分が怠惰で救えない人間になって結構たつが、俺も頑張らねば!と急に思った。
それと追記ですが、音楽と映像ばかりに気を取られて映画を見てる間は思いもしなかったんだけど、この監督は天才的に聞き上手です。あまりに自然で見落としそうになるけど、これはカーネーションによる自主制作プロモ映画じゃなくて、牧野耕一によるドキュメンタリー映画なんであって、この映画に収められている言葉は牧野耕一が対話によって採取した言葉なんであって、そう考えてみると結構凄い。「情熱大陸」みたいに筋書きに登場人物を当てはめて一丁上がり、と言うのとはかなり違う。
上映前、「宇宙の柳、たましいの下着」(ISBN:9784990334833)を購入した。直枝さんの博覧強記ぶり、探求者としての深度は、熱狂的なファンの想像をも遙かに絶するものであった。15年以上ファンをやっているけれど、正直「舐めていた」としか言いようがない。凄い本なので、カーネーションファンに限らず音楽好きならば是非とも買って欲しい。大塚寧々の写真集が普通に本棚に入っているなど余計なディテールも豊富であるし、索引に並ぶアーティストの数はほとんど狂気であるし、達人によるディスクガイドとして大いに役立つであろう。これでCDもついて\2,940は頭がおかしい。安すぎる。