ウルトラセブン第29話「一人ぼっちの地球人」@学習院大学中央校舎

今年で取り壊される学習院大学のピラミッド校舎(前川國男、1960年)をウルトラセブンが誤って破壊する、ウルトラセブン第29話「一人ぼっちの地球人」の記念上映会に行ってきた。DVDか何かを映写するんだろうと思っていたらフィルム上映だった。

学習院大学史料館特別企画
「さよなら!ピラミッド校舎」開催のお知らせ
NEW!!
皆様に親しまれてきた学習院大学中央教室(通称ピラ校)が、
今年度をもって取り壊されることになりました。
最後のお別れ会として、この学習院大学のシンボルが登場する『ウルトラセブン』の上映と、
本作品の監督・満田氏のトークショーを開催いたします。
上映作品:円谷プロダクション制作 『ウルトラセブン
第29話「ひとりぼっちの地球人」(1968年)
日時  :2008年1月13日(日)
映画上映・トークショー時間:11:00〜/14:00〜
*上映中の入退場はできません。
場所  :中央教室(ピラミッド校舎)

場内は老若男女で階段まで埋め尽くされる大盛況であった。文字通り子供からご老人までの観客が揃ってウルトラセブンを眺めていると言うのは、何だか異様で面白かったです。
前説に、今回の上映会を主催した学習院大史料館の館長と言う人が登場し、ピラミッド校舎の歴史やら何やらについて少し語ってくださった。曰く、「今日は満員で空気が生き生きとしているが、普段は全く使われておらず、いわば廃墟が学校の中心にあるようなものだった。廃墟が学校の中心にあると言うのは美学上、大変にすばらしいと考えており、内心ほくそえんでいたので、取り壊しの決定はとても残念だ」などなど。当然、大いに受けていた。続いて監督のお話。内容についてはまとめて後述するが、とにかく話すのが巧い人で、どのエピソードも興味深く、大変に面白かった。
で、上映が始まった。ピラミッド校舎が怪獣ではなくセブンによって破壊されることは、前説の段階で明らかにされていたが、その内容はセブンが怪獣に攻撃しようとして間違って踏み潰す(攻撃は空振りに終わる)と言う想像を超えるもので、場内は脱力気味の暖かい笑いに包まれた。
上映終了後は満田監督の解説と質疑応答。思い出せるものをいくつか。
・ロケ地に学習院を選んだのは、円谷一氏がOBだったため。事務方に知人がいるというので交渉し、撮影許可を得た。
・現場に行ってみたらピラミッド校舎があったので使うことにした。
・撮影前、東京は数年ぶりの大雪に見舞われ、雪の有無でカットが繋がるかなーと思ったけれど1カットも撮ってなかったので何とかなった。無謀な助監督は「消防車でも呼んで水まきますかー」と提案したが、ミニチュアに雪を降らせることにした。
・ピラミッド校舎破壊についての苦情はなかった。学校側には無断で破壊した。
・隠し扉のある研究室、廊下は学内ではなくセットを使った。学習院にそういう部屋があれば使った。
・一応、自分の母校の大隈講堂も少しだけ背景に入れてみた。
・製作期間は、準備を無視して考えると1話あたり大体21日ぐらい。学習院でのロケは1日分。
・本編中の特殊車両はロケ地まで自走する(道交法の問題でウィングは外して走る)。ポンコツなので、撮影中に止まると手押しで転がすこともあった。
・(本編に登場するソガ隊員と婚約者のその後を撮るつもりはなかったのか、との質問に対して)周辺人物はあくまでゲストキャラとして扱い、意図的にエピソードを発展させないようにしていた。話がそちらに引っ張られてしまうので。
・「本編で破壊される建造物の中で本編を見る」という体験は、今日の1回目の上映が人生初だった。
と言うわけで、我々も相当に珍しい体験をしたことになる。質疑応答、最後の質問者は小さなお子さんだった。「あの宇宙人はどうなっちゃったんですか」「えーと、消えちゃったんです!」 何となくまとめに相応しい和気藹々とした感じになり、監督のよびかけで「しゅわっち!」の締めをやって、終了した。楽しかった。
関連:当日の風景(2008年4月13日の日記)