海水浴に出かけた

無職なので、友達と海水浴に出かけた。友達は平日に動ける立場にあるだけで、別に無職ではない。
電車に揺られながら外の風景に目をやると、見事な暗雲が立ちこめており、ときおり大粒の雨だれが車窓を打つ。これはまいったと思っていたが、目的地に近づくにつれ、どんどん晴れてきた。運が良かった。
目的の駅に着くと、もうお昼の時間になっており、取りあえず昼ご飯を食べに行くことにした。友達お勧めの、漁協が経営しているという食堂に向ってトボトボ歩いていく。行ってみて気づいたが、数年前、同居人と旅行したときに通りかかって、昼ご飯を食べた記憶のある場所だった。何を食べたのかは覚えていなかったが、その光景は確かに脳みそに焼きついており、このような思い出を燃料に我々は生きているのだなあ、とか何とか、漠然と思いを巡らした。本日は刺身盛り合わせ定食をいただき、それなりに美味しかった。ごちそうさまでした。
その後、海に向って歩いていくと、空の半分程度は青空になり、絶好の海水浴日和へと天候が変化していた。また、とにかく僻地なので、人が少ない。家族連れや友達グループが5組ぐらい遊んでいる程度で、テレビで見るようなキチガイ沙汰の海水浴場とは全く様子が異なるものだった。
道ばたで水着に変身し、海に突入すると、一定のリズムで波が押し寄せる、遠浅の、とても良い海水浴場で、波のない海にしか行ったことのない自分はかなり興奮してしまった。浮き輪を借りてボディボードならぬボディ浮き輪に挑戦し、それがたまに上手くいくので、面白くて仕方がなかった。途中、あまりの波の強さにゴーグルをさらわれたりしたが、久々に全身全霊で体を使って遊んだ。足のつく遠浅の海で、白波が目の高さにシュゴーと押し寄せてくるのは、ものすごい大迫力なのにもかかわらず、あんまり泳ぎが得意でない自分にも怖くない。ボディボードとかが流行する理由が何となくわかった気がした。
帰りの道中、がらんとした駅の待合室でコーラを飲みながら、ぼーっと電車を待っていた。ふと、我々のような男達が、我々と同じように、突然「海に行こう」などと思い立ち、それがたまたま今日だったとしたら、この待合室は我々のような気持ち悪い男どもで埋め尽くされていたのだろうか。などと空想した。そういうこともあるかも知れない。
楽しい一日だった。