帰省

お盆なので帰省した。あまり遠いわけでもなく、「帰省」と言うより「帰宅」と言った方が感覚的には近いのだが、実家を離れて4年ぐらい経過してみると、それでも段々と「帰省」の気持ちが増大してくるのだった。
今年の夏は曇天続きだったが、この日は朝から晴れていて、何だか景色が綺麗に見えた。お土産を買って電車に乗って、地元の駅に到着すると、いよいよ空は晴れ渡り、自分が知っている夏はまさにこれだ、と言うような感慨を覚えた。
久々の故郷は、寂れていたが綺麗に見えた。かつて暮らし、日常の力によって錆びに錆びついてしまった景色や空気が、懐かしくて新鮮で、軽やかなものとして蘇ってくるような感覚は、実に素晴らしいものだったが、少し離れた土地でたった数年暮らしただけで(しかも年に1〜2日は帰省しているのだ)、こんな気持ちになるものかという驚きもあり、寂しいような間抜けなような、人生は短くてちっぽけかも知れない、というような気持ちにも見舞われた。お盆特有の空気のせいかもしれない。
駅からトボトボ歩いて、自宅に到着した。
祖母に挨拶をし、仏壇に手を合わせ、昼ご飯を食べたりアイスを食べたりしながら時間を過ごした。ちょっと離れた土地で暮らしている兄に電話をかけると、「じゃあそっち行くわー」と言うので待っていたが、待てど暮らせど到着しなかった。久々に地元の様子を確認したいので、兄に運転手をさせようと目論んでいたのだが、アテが外れてしまった。
夕方、戻ってこない兄を置いて、父と二人で送り盆のミッションを遂行した。火のついた提灯を持って車の助手席に乗り込むなんて、年に1度しかやらないことで、すると残りは何回ぐらいであろうか。お盆は人の死が身近に感ぜられる。
18時ちょっと前ぐらいに兄も戻ってきて、家族で鰻を食べに出かけた。祖母は外食をしない人なので一緒ではなかったが、来年は是非一緒に行きたいと思う。しかし鰻なんて食べたら、かえって気持ち悪くなってしまうだろうか。うーむ。悩みどころだ。
夜中は兄と「硫黄島からの手紙」を見て、やはりイーストウッドは凄いなーと一緒になって感心した。
そして寝た。
泊まらずに帰ろうかと思っていたのだが、何だか居心地がよくなってしまって一泊してしまった。涼しく、寝心地の良い夜だった。