井の頭公園の私服刑事

天気がよいので井の頭公園に散歩に出かけた。
連休明けの平日と言うことで、人出はさほど多くなく、公園全体が居眠りしているかのような雰囲気であった。土日の混雑した印象とは、ずいぶん違うものだ。緑がとても美しく、風がぬるかった。ベンチに腰かけ、しばらく池の鯉やら亀やら鴨やらを眺めて過ごした。
人が少ないので、一般客と異なる動きをしている人間は非常に目立つ。公園に到着した瞬間から「なんだこれ」と思っていたのだが、この日の井の頭公園には、私服警察官が大量に動員されていた。少なく見積もっても20人ぐらいはいた。とにかくどこを見回しても、私服刑事が視界に入る。
彼らは、長袖Tシャツにキャップとか、カジュアルな服装に身を包んでいたりもするのだが、一般人とあまりにも体格が違うので、すぐに区別がついてしまう。というか、一般人は片耳イヤホンのコードを耳の上側に巻きつけたりしないし、コードが耳元でコイル状になっていることもない。「この人はどうかな」みたいに考え込む必要もなく、一目瞭然で判別できてしまう。新聞を読んでいるふりをしたり、欄干にもたれて池を眺めるふりをしている刑事もいたが、体格がちがう、イヤホンが不思議、の他にも、一点を凝視する時間があまりにも長い、誰とも会話しない、などなど、行動様式が独特すぎて、やっぱりバレバレなのだった。
刑事ドラマなどを見ていて、「人混みに紛れているつもり」というシーンのバレバレ感に突っ込みたくなる時があるが、あれは凄くリアルなのだと知った。恐らく、公園とかで一般人のふりをするのは、捕まえたい人にバレないように、というより、行楽地で周囲に迷惑をかけないように、ということなのだろう。
彼らは何を探していたのだろう?基本的に歩いて探している感じだったが、座ったままの捜査員も多かったので、物ではなく人を探していたのだろう。会話も聞いたが、捜査は難航気味のようだった。同行した友達は「金正男でも遊びに来てたんじゃないの」と感想を述べていたが、思わず納得してしまうような井の頭公園界隈であった。