トイ・ストーリー3(XpanD/字幕)を見てきた

水曜日だったので見てきた。あらすじは予告編で流れている通りのもので、意外な展開や脱線のようなものはない。が、ディテールがあまりにも凄いので、ネタバレ程度では面白さがビクともしない。全編に新鮮な驚きとスリルがあり、作り手の熟考に支えられた揺るぎのないモラルがある。しかも全く説教臭くない。アメリカ映画のひとつの理想型だろう。
おもちゃを通して語られるモラルは、特に「ストロベリーのにおいのクマ」ロッツォの行く末に顕著だが、一面的な因果性、勧善懲悪の原理を克服しており、凄みがある。怨嗟と復讐がめぐる因果応報を、より上位にあるポジティブな因果で破ってみせる(ことをほのめかす)終わり方は、まあ、見事としか言いようがないものだった。苦さと希望を残しつつも決して語りすぎない態度に、作り手の大人度の高さを感じた。
人間が死ぬのと同じように、おもちゃが究極的に行き着く因果の終点というものは、ある。どんなに持ち主に愛されようと、やがて辿り着く場所である。おもちゃたちは、そうした因果の終わりを一度目にする。その光景がものすごい。おもちゃの演技もものすごい。大人向けの映画であれば、おもちゃが無惨に廃棄・破壊される様子そのものを描いて「無常なものですね」とやれば済んでしまいそうなものだが、「トイ・ストーリー」は全年齢向けの映画なので、そういうことをしない。おもちゃの宿命や諦念や覚悟を、おもちゃの表情や仕草や演技で、とにかく丹念に描いてみせる。これがもう、本当に息を飲むような表現になっていて、こりゃすごい映画を見ているな、という感覚があった。ただ不条理を受け入れるみたいなシーンにせず、むしろ条理の終点を見ることの怖さのようなものに、ちゃんと向き合っている。
「我々には避けがたい宿命があって、その日が来るまで、ひたすらに良く生きるしかないのだ」というメッセージがあれほどまでに強く伝わるシーンは、近年見た覚えがない。