聖地チベット−ポタラ宮と天空の至宝@上野の森美術館

見てきた。連休中なので混雑しているかなと思ったけれど、そうでもなく、見やすかった。

チベットの歴史についての知識はほとんどない。が、隣接する某超大国が長らく民族浄化じみたことを行なっており、危機的な状況にあるということは、ニュースやら何やらで色々と見聞きしていた。展示の主催や後援に、某超大国が直接関わっていることは確実だし、展示じたいにも諸々のバイアスがあるだろう。そのあたりはある程度覚悟しながら見に行った。
バイアスは、やる気のなさとして表出していた。展示に素材の表記がない(作品リストには書いてあった)。歴史的背景の解説がない(特に近隣諸国との関係性が全然掴めない)。製作者や依頼者についての解説がない。仏像や法具、宗教画の展示がほとんどなのに、用途についての説明が乏しい。宗教的モチーフで括ってあるのか、時系列で括ってあるのか、場所ごとに混乱があって、何が何だか分からない。これらのことは、図録を買ったり音声ガイドを聞いたりしていれば分かったことなのかも知れないが、展示だけを見ている自分にとってはサッパリ分からずで、若干ゲンナリさせられた。
たとえば、順路の最初にあったのは「魔女仰臥図」(→google画像検索)という展示物だった。これについての解説はこのようなもので(→上野の森美術館公式)、なるほどなるほど、面白い、とか眺めていると、製作年代は「20世紀」とあり、それにまつわる解説がない。はて、これは誰がどのような意図で描いたものなのか。こういったものを描く専門のお坊さんがいるのか。どの時代の様式を汲んだものなのか。これでは、見る側としては作品の意味を掴みきれない。こんなようなポカーンとした杜撰さが、至るところに見受けられた。
展示物については、チベット旗にも見られる独特の色彩感覚に目を奪われ、タンカ(掛け軸みたいなものだった)の細密な刺繍に目を奪われ、仏教でありながら併せ持つヒンズー度の非常な高さに目を奪われ、金属のものや小型のものが多いのは地勢とか気候の都合によるものなのかしらと思いを馳せ、髑髏の耳から七色の団扇みたいなのが出てるのは一体何なのかしらと心を奪われ、いろいろとロマンであった。密教が持つ独特の極端さには、何か抗いがたい魅力がありますよね。