サブウェイ123 激突を見てきた

トニー・スコットの最新作、「サブウェイ123 激突」を見てきた。
主演はデンゼル・ワシントン、敵役にジョン・トラボルタ。他にもジョン・タトゥーロなど、達者な役者が大量に出演しており、適材適所で見ていて楽しい。以下、若干ネタバレします。
トニー・スコットの不治の病=トニー・スコット病の悪化を眺めて楽しむ映画である。執拗に選択される望遠レンズは常にギュンギュンと落ち着かず、摩天楼の空撮以外は大体いつもクローズアップであり、カメラは登場人物の周囲を回転木馬のごとく回転し、すべてのコンピュータは信じがたい高性能を誇り、無意味かつ大規模な交通事故が頻繁に発生し、集団が一列になって発砲する。これがトニー・スコット病である。いつものことではあるのだが、今回のは特に病的だったように思う。
警官隊が移動するパートがある。本当にただ移動するだけの用事で、特に何かに追われていたり、邪魔されているわけでも何でもないのだが、これが凄いことになる。ただ急いでるだけなのに、彼らは突然、ゴロンゴロンと壮絶にクラッシュし始めるのだ。しかも何度も何度も。そのせいで死人も出る。こういう下らないことを、いかにもトニー・スコットっぽい激しいカットバックで、「どうです!ハリウッドならではのカークラッシュですよ!かっこいいでしょう!」と見せつけられると、観客としては呆気にとられつつも「やったぜ!トニーが狂った!というか、やっぱり狂っていた!」と感動せざるを得ないのである。隣に座っていた知らないおじさんも、ときどき小さく笑っていた。そんな調子で万事が進行する映画である。
犯人像は意味不明だし、犯行の動機も方法も、杜撰を超えて少し不思議である。全編あまりにも忙しいので、登場人物が見せるのは感情ではなく反射である(ただし役者が上手いので、見ている間は説得力が持続する)。結末にも一抹の疑問が残る。などなど、色々言いたいことも(後になると)あるのだが、場面場面のスリルには一定以上のものがあり、ハリウッド映画っぽい確かな見応えがあった。面白かった。
トニー病に興味がなくても、役者の良さとスリルの連続で、誰でも結構楽しめると思う。サービスデーに見る映画としては、当たりの映画だった。